Makanai Fuzzの裏側

空中配線にて製作されたゲルマニウムトランジスタファズ「Makanai Fuzz」の製作背景をご紹介します。
始まりは酔って買った
ローゲイントランジスタ
Makanai Fuzzに使用しているトランジスタはソ連製のゲルマニウムトランジスタです。

ウクライナから送られてきました
実は元々ファズフェイスを作ろうと思って買ったトランジスタなのですが、ビールを飲んだあとの就寝前に商品紹介ページをロクに読まずに酔った勢いで買ったものでした。
なんとこのトランジスタはhFEが平均30~40という増幅率の低いトランジスタでした。
ファズフェイスを作るには少なくとも70前後のものが必要です。
クラシカルなファズ回路には正直使えないトランジスタだったのです。
しっかり説明文を読んでおけば良かったとひどく後悔をしました。
意地でもファズを鳴らしたい
誤って買ってしまったローゲイントランジスタの個数はなんと100個!
一つのペダルに2個入れても50台は作れます。
手元に寝かしておくのも勿体無いので、なんとかファズを作れないかと調べに調べてたどり着いたのが、Makanai Fuzzの回路です。

歪みの作り方はファズフェイスではなく、トーンベンダーMK3やディストーションに近い回路となっています。
しかしバイアスを調整することで、オクターブ成分を含んだファズや、ブチブチとした破滅的なファズ、扱いやすいディストーションライクなファズと、幅広いサウンドメイクが可能となりました。
PNP型でありながら、アダプター駆動
PNP型トランジスタはマイナスの電圧で挙動するのが特徴です。
ペダル内にマイナス電圧を供給すること自体は、パワージャックの配線を通常と逆向きにつけるだけなので別に難しくないのですが、それをやってしまうとパワーサプライを使用することが難しくなります。
しかし個人的にはエフェクターはアダプターで駆動させたい派なので、この問題をICコンバーターを用いることで解決しました。

正電圧で入力された電圧をICコンバーターを使用して負電圧を取り出し、それをトランジスタへ流すことにしました。
組み込む回路が増えてしまいますが、使いやすさには勝てません。
ちなみにPNP型トランジスタをICを使わずに正電圧で駆動させる設計も世の中にはあります。
ただ、今回はコンバーターを採用しました。
ちょっといい(高級な)パーツを使用する

Tone Brew ClubのエフェクターではNOSパーツは原則使用しません。
NOSだから音が良いわけでも性能が良いわけでもないというスタンスです。
ただ、今回はクラシカルなGeトランジスタの空中配線ファズを作るので、見た目にこだわろうと思い、NOSパーツや見た目重視のパーツを用意しました。

出力のカップリングコンデンサはNOSのTRW社製コンデンサーを使用しています。
耐圧が50Vなのにこのサイズ感。
ギターのトーンにも使われていたりします。

入力のコンデンサーはポーランドのVishay社製を使用。
NOSではないですが、こちらもギターのトーン用にも使われる高品質なパーツです。
耐圧は400V。
しかしサイズはTRW社製の方が大きいです。
あとは信号ラインの抵抗にカーボンコンポジット抵抗を使用したり、内部配線にUSAクロスワイヤーや太い銅線を使用したりと、通常使用しないパーツを使いました。
(パーツセレクトは今後の製作個体によっては変動する場合がございます。)
シンプルなファズ「Makanai Fuzz」

Makanai Fuzzはボリュームとバイアスの2ノブ仕様です。
ゲインは変えられません。
常にMAXです。
バイアスノブは非常に幅の広い利き方をします。
特に室温に影響を受けるため、その時々でスイートスポットが変わるのが特徴です。
FuzzFaceではないので鈴なりが得意なペダルではないですが、シンプルな回路なのでギターのボリュームにもそれなりに反応します。
ボリュームはバイアスにも影響を受けます。
まずは低めの設定でバイアスを回しながらボリュームも調整してください。
ボリュームを高い状態でオンにすると予期せぬ大音量が流れるかもしれませんのでご注意ください。
電源は必ずセンターマイナス9Vを使用してください。
9V以上を給電するとコンバーターが壊れます。
誤った電源入力による故障はサポート外です。
お気をつけください。
販売情報
Makanai FuzzはKimagure Pedalsのラインナップです。
今回は3台のみ製作します。
販売状況は商品ページをご覧ください。
リンク切れの場合は売り切れとなります。
ご了承ください。